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研究目的

本領域研究には,2つの明確な目的があります.
その第一はナノ材料科学のフロンティア開拓です.tanaka
最先端の透過型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡により,個々の原子を直接観察・電子分光できるようになり,これらナノ機能元素の特徴的な局所構造や化学結合状態が発見されました.さらに高精度第一原理計算によって,特定の構造が熱力学的に安定であることや,材料機能を強く発現させることがわかってきました.これら世界最高水準での研究をリードしている研究者が,本領域研究の計画研究メンバーとして結集しました.本領域研究では,ナノ材料科学の未踏領域を世界に先駈けて,さらに深く広く開拓することを目指します.
第二の目的は,ナノ構造情報の活用です.
実験と理論計算に基づいた膨大な材料情報を具体的な材料創製に活かすべく,情報の統合化を,統計熱力学および情報科学の学問体系に立脚して強力に進め,同時に実験によって新しい構造−機能相関を探求します.その結果として,デザインされた材料創製を合理的・効率的に行うための学問基盤となる新しい材料科学の奔流を創り出すことができるものと期待しています.

伝統的な材料技術に近代科学が適用されたのは20世紀半ばです.化学熱力学や固体物理学の材料分野への適用が進み,学問体系に基づいて実験結果を統合・整理することで,自由エネルギーや物性値の化学組成や構造への依存性といった多様な材料情報が蓄積されてきました.これらの情報を活用することで,材料技術が大きく進展するとともに,技術革新が科学の一層の発展を促してきました.
この歴史の中で,結晶の表面,界面,点欠陥等に局在した特異なナノ構造が,材料特性に決定的な役割を担う例が数多く見出されました.21世紀になり,このようなナノ構造についての情報を直接的に得るための実験・理論計算手法が格段に進歩しつつあります.その第一は,超高分解能ナノ計測法の出現,第二は,個別のナノ構造をビルトインするプロセス技術の進展,第三は,高精度第一原理計算によるナノ構造の安定性と機能性の定量化手法の出現です.これらの実験・理論計算に基づいた研究の進展により,これまで未知であったナノ構造と機能の関係=ナノ構造情報を直接かつ定量的に獲得する方途が拓かれたのです.そして,その結果として構築されつつあるのがナノ材料科学と呼ばれる分野であり,今後のさらなる発展が期待されています.材料設計・創出という観点に立つと,ナノ材料科学の応用分野の重要性は明確です.すなわちナノ構造情報についての普遍的な原理をもとに,デザインされた材料創出を合理的・効率的に行うことです.これは,従来の「勘と経験」に基づいて行われてきた材料研究に革新的な進歩をもたらすものと期待されます.
本領域研究では,計画研究メンバー,公募研究メンバーを中心に,国内外の幅広い研究者と連携して,この革新的な材料研究を進めていきたいと思います.ご興味ある方は,是非,共同研究をご提案戴くか,今後の公開講演会,学会活動,出版物などをご参照ください.

領域代表者
京都大学工学研究科
田中 功